Discovery of chemosynthesis-based association on the Cretaceous basal leatherback sea turtle from Japan
2017年9月14日 14:24 カテゴリ:Article
Jenkins, R. G., Kaim, A., Sato, K., Moriya, K., Hikida, Y. and Hirayama, R. (2017 ) Acta Palaeontologica Polonica . vol.62 (4) pp.683-690. Link
概要
大発見をしました.白亜紀のウミガメ化石に化学合成群集があったのです.
深海からはときおり鯨類の腐敗過程にできる特殊な生物群集である「鯨骨群集」が発見されます.
クジラ類が出現したのは古くても5000万年ほどまえですから,白亜紀(約1億4000万年前から6600万年前)には"鯨骨群集"はなかったのでしょうか?
いいえ,Kaim et al. (2008)で我々が報告したとおり,白亜紀には首長竜などの海棲爬虫類の遺骸に"鯨骨群集"が形成され,それを「竜骨群集」と呼んでいます.
今回,我々は北海道中川町の白亜紀の地層から産出した原始的なオサガメ類の化石を調べ,そのオサガメ類の甲羅とともに,ハイカブリニナ類(巻貝)やハナシガイ類(二枚貝)を発見しました.
これらの仲間は首長竜遺骸や近隣の白亜紀メタン湧水からも発見されており,この白亜紀のオサガメ類の遺骸にも「竜骨群集」が成立していたことが明らかです.
ウミガメ類にも竜骨群集が成立していたというのは「竜骨群集」「鯨骨群集」の進化を考える上で非常に重要な意義があります.
首長竜は白亜紀末の約6600万年前に絶滅しました.クジラ類が出現したのは約5000万年前です.その間,約1600万年間のギャップがあります.その間を竜骨群集構成種がどのようにして生きながらえたのか?その一つの可能性としてウミガメ類が挙げられるのです.
もちろん,メタン湧水や熱水,魚類の腐敗環境などでも生きながらえることができるかもしれませんが,現生の鯨骨群集は,メタン湧水などの他の化学合成生態系とは少し隔絶しているようで,その進化史を考える上で,今回のウミガメ骨群集(竜骨群集ウミガメバージョン)の発見は意義があります.