第69話 雪の修論発表会
2019年6月16日 12:00 カテゴリ:兀天狗
修論発表会前日.
夜から降っていた雪はとどまることを知らず,どんどん降り積もっていきます.
朝になると,一面真っ白で,ずっと石川県に住んでいる私もこんな大雪は初めてでした.
そこらじゅうで,バスや車がスリップしたり,雪にハマったり.
車はまともに走れません.
とても日常とはかけ離れた光景でした.
金沢大学も休講になりました.
したがって,修論発表会も1日延期になり,ありがたいのかどうなのか.
さて,そんなことを言っている場合ではありません.
災害級の大雪にみんなパニックになっています.
私は先生と同じく,このような状況を楽しめる人なので(不謹慎でごめんなさい),割と冷静でした.
とりあえず,みんなを助けに行こうとすると,
先生からも「大学に無理してくる必要はない.困っている人がいたら助けに行こう」と連絡がきたので,
H君の家に向かいました.
その道中,雪でハマっている車をたくさん見ましたが,
女性のみとファミリー層だけ助けました.
若い男なら,重たい雪も車もなんとかできるけど,女性はなかなか一人では難しいでしょう.
でも,まちなかの大学生がみんなスコップを持って,まちのひとを助けている光景を見て,
「ああ~,なんか素敵な景色だな~」としみじみ(快晴でもあったので).
H君の家に着きましたが,まだ起きていませんでした.
無駄な心配でしたね(笑).
パニックが少し落ち着いたところで,大学に行きました.
修論発表会が延期となり,少し余裕ができました.
会場が少し小さいところになってしまったのは残念ですが,やることをやるだけです.
私の発表は2日目です.
初日が始まりました.
大雪もあったので,例年と少し雰囲気が違ったのを覚えています.
仲良くなかったかもしれませんが,同級生と乗り越える試練もこれが最後です.
できる限り,みんなの発表を見ておこうと思いました.
さて,2日目いよいよ私の出番です.
この日のために新調したスーツを身にまとい,出陣です.
この修論発表では,私が研究生活史上最も記憶に残る質問がありました.
「アミノ酸から栄養段階を推定するといっているが,その結果から推定された食物網とこれまでの古生態学による食物網が違っていたらどう説明するのか.
そもそも,古生態学でわかっていることをなぜ同位体比から明らかにする必要があるのか.」
私の研究の根本をつついてくる質問です.
すべてをお答えすることはできませんでしたが,
たとえば,同位体比を使うと,食性がわかるだけでなく,雑食ならば植物と肉の割合を,肉食ならばどのくらい高次な消費者なのかを推定することが考えられますよね(現生の場合).
ただ,いずれの回答にも,「化石に残っているアミノ酸が同位体比を保持しているのか」というが課題が付いてきます.
そういえば,アミノ酸の窒素同位体比を測定する際に,私自身の爪を使って,私のアミノ酸の窒素同位体比を測定しましたね.
そのことを発表に組み込むことが,ある意味やりたかったことのひとつです.
人間の栄養段階は一次生産者が水棲と陸棲の両方を兼ね備えているので,正確に推定するのは難しいですが,
私の栄養段階は2.8か2.9くらいありました(系統誤差は大きいです).
お寿司を食べていたから高めに出た気がします.
こういった遊び心が研究には必要だと私は思います(笑).
とはいえ,この修論発表は,私の研究生活において,最も満足のいく発表でした.楽しかった記憶しかない.
いつも発表が終わると,凹んでいましたが,今回は充実感しかありませんでした.
同級生のH君にも,「修論発表中,ニヤニヤしすぎ(笑)」と言われましたから,
たぶん発表中に感情が表情にあふれていたのでしょうね(笑)
いや~,何回も言いますけど,本当に楽しかったです.
たくさんの人に出会って,たくさんの人に支えられて,これだけの発表ができました.
謝辞には書き切れないほど,感謝しています.
ジェンキンズ研を選んでいなければ,ここに辿り着かなかったかもしれません.
たくさん指導していただいたジェンキンズ先生.
分析の技術・知識・考え方を教えてくれた後藤さん.
困ったときにいつもお力添えしてくださった力石さん.
ゼミでいつもビシバシ鍛えてくれた地質グループの先生方.
天狗の私をいつもおだててくれた研究室のみなさん.
(あとは書き切れないので,後日)
本当にありがとうございました.