第62話 一筋の光明
2019年4月28日 12:00 カテゴリ:兀天狗
セラミック管を折ってしまい,新しいものに交換しました.
しかし,後藤さんから衝撃の一言が!!!
「ちょっと,装置の調子がかなり悪い.窒素同位体比だけじゃなくて,いままでの炭素同位体比分析もできない.」
やってしまった・・・.
たくさんの人が利用する同位体比分析装置を壊してしまったかもしれない.
あぁ,あそこでセラミック管を折ってさえいなければ・・・.
自分の研究が進まないのはさておき,いろんな人の研究にも支障が出るし,
後藤さんから膨大な時間を奪ってしまったのに,良い結果を出せなくて申し訳ない気持ちでいっぱいでした.
なんとかしたいが,何をして良いのかすらわからず,後藤さんを頼りにするしかできない現状がもどかしくて.
できる限りなにか力になりたいとは思い,時間が空いたときはMS室へ駆け込みました.
大した知識もありませんでしたが,後藤さんの話や考えを聞くことならと.
後藤さんには,「装置もいいけど,ちゃんと修了できるように修論を仕上げなさい.」と言われましたが,
そんな心の余裕はなかった.
卒業とか修論とかは二の次にして,まずは元の状態に戻ってくれ!と願うばかりです.
1,2ヶ月後のある日,「多分原因がわかった」と後藤さんから連絡が来ました.
ダッシュで実験室へ!!!(廊下は走ってはいけません)
どうやら,どっかから酸素が入り込んで,その酸素が完全に抜けきらず,装置の中に充満していたようです.
その矛盾のない説明を聞いて,後藤さんの偉大さを今一度認識しました(詳しくは実験ノートか何かのノートに書いたはず).
このくらいの時期から,分析機器を理解し,メンテナンスできるって,とてもかっこいいと思うようになりました.
正直,これまでは機器分析は,
ピュッとさして,ポチッと押せばできるもんだと思っていましたが,
そこに至るまでの日々のメンテナンスの重要さと難しさを感じました.
学生が当たり前のように,機器分析できることはとても恵まれていることです.
分析屋はカッコイイです.
ここら辺については,後日まとめます.
さて,原因は判明したようですが,直るかは定かではないとのこと.
「まずは,炭素同位体比を測定できるようにすることが目標だから,時間・労力・お金のことを踏まえても窒素同位体比が分析できるかは難しいかもしれない.」
「はい.それは覚悟しています.装置が元の状態に戻せるなら本望です.」
「いますぐには,炭素は測れないから,準備ができたらたくさん手を借りるね.」
「はい.仰せのままに.」
「そして,この数ヶ月は兀橋くんのマシンタイムだった分,次はほかのみんなの研究に必要なデータが優先.」
「もちろんです.僕はその後でがんばります.アミノ酸の窒素同位体比が測定できない覚悟もしています.」
アミノ酸の窒素同位体比は測定できないかもしれない.
覚悟していましたが,やはり重たい言葉です.
僕の修論の方針発表を思い出すだけでも情けないです.
M3への扉が少しずつ開き始めました.