第56話 博士後期課程に進学しなかった理由 壱幕

2019年3月17日 12:00 カテゴリ:兀天狗

今年も就活が解禁して,早2週間です.

就活生のみなさんには,自分の夢に向かってがんばってほしいですね.

私も2年前は同じことをしていましたからね,Time fliesです.

さて,私は博士後期課程に進学したい気持ちはありましたが,就職という道を選びました.

多くの人には,お金を稼ぐためとかテキトーなことを言っていましたが,

本当に<M1当時考えていた理由>と,1年後の<いま何を感じるか>を書かせていただきます.

長めです(3話構成).

進路に迷う学生さんに0.000000000000000000001‰でも力になれば嬉しいです.

博士後期課程に進学しなかった理由

・今の力量でアカデミックの世界で勝負する勇気がなかった.

・自分のやりたいことが,「民間企業」でも達成できるのではないかと感じた.

・進学するにしても,いったん教育機関を離れて「民間企業」というものを見てからでも良いのではないかと決めた.

☑今の力量でアカデミックの世界で勝負する勇気がなかった.

<M1当時考えていた理由>

これが一番で,自信がありませんでした.

ジェンキンズ先生や力石さん,佐藤さんなどの研究者を見ていると,とても別世界のというか,そこまで辿り着けるのだろうかという不安がありました.

特に,観察力とひらめきは自信がありませんでした.

M1になってから,私は何がやりたい(研究がしたい)のかをひたすら問い続け,「研究のどこが一番楽しく感じられるのか」を考えるようになりました.

その答えは,「サイエンス(仮説に基づいて検証し,得られた結果から真実を追究する)」ではなく「プレゼンテーション」でした.

M1のときまでは,研究の「考察」よりも,データをまとめて,きれいな図を作って,どうすればわかりやすく,おもしろく,かっこよく,聴衆を楽しませられる発表ができるかを考えて行動することがすごく好きでした(発表はエンターテインメントです).特に,見てほしい人が聞きに来てくれる発表会は,120%フルスロットルです.

そうなってくると,先生方のような研究のモチベーションや閃きには届かないのかな.

閃きに関しては,私の後輩達のほうがよっぽど優れています.

英語も全く勉強したいとは思わなかったですし,そのうちAIの自動翻訳が活躍してくれるだろうと思っていました.

そういった点から,ドクターは取れても,その先に進めなくなるのではないかと考えました.

また,学部は違いますが,博士後期課程に進学すると言っていた友人の姿を見ていると,

彼は,修士の期間に2本か3本の英語論文を投稿したらしく,知識量は圧倒的でした,

こういう人が研究者になるんだろうな~と思いながら,やや消沈.

そして,「(全員じゃないけど)最近の修士のレベルが昔の卒論生程度まで落ちている」と言われたことも気に掛かりました.

レベルが低いんじゃ,進学しても生き残れないだろうな~と思いました.

といった具合で,私はアカデミックの世界で闘うことを諦めました.

<いま何を感じるか>

そんなに深く考える必要はなかった.

自分の気持ちに素直になって,「研究をやりたい」のか「他の道でがんばりたいのか」の2択で強い方を選べば良いと思います.

そもそも,ジェンキンズ先生や佐藤さんと比べること自体が間違っていました.

先生も佐藤さんも私と雲泥の差のキャリアがあります.

同じ天秤に乗せることは失礼ですね.

また,卒業してから,某S先生と食事に行きました.

「何で進学しなかったの?」

「投稿論文も書いていない中で進学しても生き残る自信がなかったからです.」

「それは仕方ない.だって書き方をちゃんと教わってないんだろ.そんな状況で投稿論文なんて書けるわけないし,むしろ博士後期課程は,それを学ぶところだから気にする必要はない.」

確かに.

論文が書けないことを悲観的に考える必要は全くなかったわけです(書く経験があるにこしたことはありませんが).

というか,書き方を教わっていないのですから当たり前です.

そして,修論発表後に,北海道大学に行ってきたのですが,そこで出会った人達が魅力的でした.

「結果は結果でしかなく,その結果にいかに科学的根拠をもって,真実を追究できるのか」それが一番おもしろいってことを学んできました.

M2の後半から,「ああ,研究っていいな~,この人達と一緒に過ごせれば成長できそうだな~」って思うようになってきたわけです.

よくある話で,自分の5年先輩にずっとくっついていれば,5年後,その力が身につくと言います.

何が言いたいかって言うと,会社でも研究機関でも,自分がこうなりたい!と思える魅力的な人の近くに行くことは自分を高めるための近道だと思います.

例えば,ジェンキンズ先生のところに10年いれば,ジェンキンズ先生のような研究者になりやすいです.

要は,能力は後から(進学してから)身につけていくので,

博士後期課程に進学するかどうかは,自分がその世界に進みたいのか,それが一番大事です(あくまで私の考え).

ただ,あらゆる情報(お金,教育環境,進学後の進路,生活面)は必ず集めましょう.

ポジティブな面だけでなく,ネガティブな面も.

特に,金銭面は必ず考慮しなければなりません.

学振にかけるもよし,奨学金を利用するのもよし,保護者から出してもらうのもよし.

保護者から出してもらうことに,後ろめたさを感じる人は多いと思います.

私は,感謝と学び続ける気持ちを維持しているなら,全然問題ないと思います.

恵まれた環境に生まれた幸運を存分に使ってください(甘えすぎはダメです).

その分,博士前期・後期課程の5年間でたくさん成長すれば良いです.

そこらへんを踏まえて,自分で答えを導き出すことをおすすめします(誰かに言われたとか周りがこうだからとかはやめよう).