第27話 大敵と見て恐れず、小敵と見て侮らず

2018年7月15日 12:00 カテゴリ:兀天狗

朝9時。

金沢では珍しい冬の太陽が私の目を覚まします。

コンディションは上々。

ギアを少しずつ上げて、大学に向かいます。

私が考えていた1位を獲るために、大事なこと。

プレゼンテーション(発声、スライドの見せ方)

論理構成

矛盾のないデータ

発表時間

質疑応答

これらの項目で私に立ちはだかってくるだろうと"勝手に"考えていた対抗馬は5人。

彼らに負けないことばかり考えていました。

スーツに袖を通し、真っ赤なネクタイをして、ギアをさらに上げます。

午後、私のセッションの直前、みんなでキメ顔の写真を撮りました。楽しかったです。

気分も充分に良くなってきたところで、会場に向かいます。

直前の休憩のときに、発表を終えたKNっちゃんが「がんばってね!!」とエールをくれたのを覚えています。ありがとね(`・ω・´)

私も素直にみんなに「がんばって」と言えるような人になりたいです。

いよいよ、私たちのセッションが始まります。

トップバッターは、おとなりの研究室の学生。

普段は割とぱっぱらぱーな感じの彼女でしたが、

うそやろ、、、

文学小説を朗読するかのような口調や言い回し。

めっちゃ発表聴きやすいやん!

女子アナかよ!

ダークホースの登場に動揺し始めた私。

彼女よりも、いい発表をしなければ!と急にプレッシャーがのしかかりました。

20分はあっという間に過ぎ、いよいよ(主役の)出番です。

座長「準備ができましたら、おねがいします」

「それでは発表を始めます」

地球学の教員や学生(合わせて60人くらいですかね)全員が私のプレゼンを聴いている。

なんと、気持ちの良いことか。

これだから、人前で話す快感はたまりません(最近はプレゼン不足やな〜)。

ただ、どんな発表ができたか、ほとんど記憶にありません。

唯一覚えているのは、中途半端に笑いを取りにいって、空気を凍らせてしまったこと。

その瞬間の「あ、こいつ、やっちまったな(笑)」と言わんばかりの表情を浮かべたタイムキーパーの先輩。

あれだけ盛大にすべったのは初めてでしたね。

笑いを取りに行くなら、迷ってはいけません。

たぶん、後輩達ならやってくれますよ(笑)

質疑応答は、60点くらいかな。

質問の意図に、ダイレクトな回答ができなかった気がします。

焦りますもんね。

でも、みんなとどっこいどっこいだわいな。

発表を終えて、席に着きましたが、女子アナの発表に勝った気がしていなかったので、モヤモヤ。

その彼女に対して高を括ってしまった自分が悔しくて、情けなくて、モヤモヤ。

とはいえ、発表後に、いろんな人から「おもしろかった」、「わかりやすかった」と言われて、少し安堵しました。

そして、その日の最後に私が最も警戒していた学生が発表しました。

発表が始まって5秒で、「やばい、勝てないかも」とすぐに感じました。

彼の論理構成、スライドの見やすさ、的確な説明、どれをとっても勝てない。

しまいには、質疑応答も完ぺきにこなす。

プレゼンテーションが終わった瞬間に「負けた」と思いました。

いままでの人生で味わったことのないような敗北感。

私の精神状態は一気に地の底へと転落しました。

1位どころか、表彰台にも上がれないかもしれない。

みんなの発表が思っていたよりも良すぎた。

鼻がのびていただけだった。

私のデフレスパイラルが始まりました。

院生部屋に帰っても、気持ちは持ち直せず、たくさんの人が慰めてくれましたが、全く心が晴れません。

本当は、泣いてスッキリしたかったのですが、私の涙腺は枯れているので、泣くことができず、ただひたすら悶々としてました。

悔しかった。人生で一番悔しかった。

燃えたよ・・・・

まっ白に・・・・

燃えつきた・・・・

まっ白な灰に・・・・