第14話 雨ニモマケズ
2018年5月 6日 12:00 カテゴリ:兀天狗
静岡県の筑波大学臨界実験所に到着したころ、雲行きが怪しくなってきました。
北海道の雨をもたらしたのは、やはり私だったのかもれません。
さて、天気が悪いと言っていても何も始まらないので、雨が降ってこないうちに、やることをやってしまいましょう。
JAMSTECの藤原さんチームと合流し、早速仕事に取り掛かります。
堆積物を掬って、ふるいにかけます。
「ふるい」と言っても、90×50くらいのふるい(給食のパンの箱の底が網目状になっているイメージですかね)に水をジャーっとかけながら、シャカシャカ振るので、めちゃくちゃ体力(腕力)を使います。
体力には自信があったのですが、それを続けるとなるとさすがにきつかったですね。
しかも、汗をかいた体に冷たい雨風が容赦なく降りかかるので、著しく体力が失われていきます。
でも、機会があれば、「ふるいがけ」はぜひともやってみてください。
すべての堆積物の処理を終えると、ふるいがけした試料から生物をピックアップするために、別室に移動します。
すでにピックアップ作業をしていた藤原さん達からキヌタレガイを見せていただきましたが、想像していたよりも小さくて驚きました。
なぜ小さいと感じたかというと、いままで聞いてきた化石のキヌタレガイは、もっと大きく、私が北海道で見つけた化石も親指くらいはあったような気がします(でかいやつはもっとでかかったかな?詳しくはジェンキンズ先生に聞いてください)。
ただ、同じ種でないにしろ、キヌタレガイ化石と現生でこれだけサイズが違うというのは非常に興味深い(interesting)です。なぜこんなにもサイズが違うのか、それも"サイエンス"ですね。
キヌタレガイのほかにも、多毛類が集められたポリ容器を見せていただきましたが、キツかったですね(笑)。
多毛類を研究している当時M2のJさんは、「かわいい」とおっしゃっていましたが、ちょっと理解に苦労しました(いまは後輩の研究を通して、少しその気持ちがわかります)。
私もピックアップ作業に取り掛かります。
宝探しみたいで、楽しく、キヌタレガイを見つけると、「いたーーーー!!!!」と声を上げてしまいます。
また、いろんな形態の多毛類もたくさんいて、生き物っておもしろいな、なんでこんな形態なんだろうと思いました。
堆積物がめちゃくちゃあったので、作業は夜通し行われます(飲み会の後です)。
しかし、雨具を忘れ、雨風にさらされまくった私は、悪寒を感じ、疲労も加え、身体がだるくなってきました。
佐藤さんが「風邪ひきそうだから、休んでなよ。」と声をかけてくださり、これ以上はまずいと思い、宿に帰りました。(あのときは大変申し訳ありませんでした)
翌日、採取されたキヌタレガイが振り分けられます。
5個体を振り分けられた私は、佐藤さんから二枚貝の保存方法をご教授いただき、キヌタレガイをエタノールで保存します。
風邪をこじらせてしまいましたが、キヌタレガイを手にすることができました。
「北海道でのフィールド」や「キヌタレガイ大作戦」を通して、標本を手に入れることの難しさ、大変さを肌で実感し、標本をもっと大事に丁寧に扱おうと思いました。
堆積物から生物の拾い出しは、とてもいい経験になりましたが、ほかの方が翌朝まで作業をしていたことを見て、その体力と気力に圧倒され、研究者を目指すのはちょっと厳しいかもなと感じたのが正直なところです。
ちなみに、このとき採取された多毛類に関する論文(Jimi and Fujiwara, 2016)も出ていますので、興味ある方はこちらをどうぞ。